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『国家安全法』とは何か?
香港でこれから起きること

『国家安全法』とは何か?香港でこれから起きること

中国は28日、反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の制定方針を全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で採択した。これに対し、アメリカやイギリス、オーストラリア、カナダは同日、「自由の砦(とりで)として繁栄してきた」香港の自由を脅かすことになると非難する共同声明を発表した。

(2020/5/29 BBC)

先日香港を巡る衝撃的なニュースが全世界を駆け巡りました。

1997年の返還以来、一国二制度が維持されてきた香港ですが、今回の国家安全法制定はその原則を根幹から揺るがすものだと言われています。

今回の記事では、

・そもそも国家安全法とは何か?

・香港はこれからどうなるのか?

などを深掘りしていきたいと思います。

『国家安全法』とは何か?香港でこれから起きること

(中国返還後の香港を巡る動き 出典:日本経済研究センター)

国家安全法とは?

香港には『 基本法 』と呼ばれる一般の国家の憲法に相当する法律があります。

これは返還前にイギリスが、香港の一国二制度を担保するために制定したもので、将来の民主化を期待するための、いわば置き土産的なものです。

イギリスは、

「いずれ特別行政長官選挙(間接選挙)を普通選挙に移行できる」

という条項を盛り込み、民主主義を香港に根付かせようとしました。

やがて、香港から中国全土に民主主義が広がってほしい、という期待を込めてのものでしょう。

実はこの基本法には旧宗主国のイギリスだけでなく中国も関わっています。

中国側は基本法第23条で、

「香港政府が、国家反逆、国家分裂、動乱煽動、中央政府転覆、国家機密窃取の行為を禁止し、外国の政治組織や団体が香港で政治活動をすることを禁止し、香港の政治組織・機関が外国の政治組織や団体と関係をもつことを禁止する法律を自ら制定すべし」

という「国家安全条例」を将来的に規定するべき、という文言を盛り込みました。

この国家安全条例を香港で成立させること=香港政府に制定させることは中国共産党、特に現在の習近平指導部にとっては悲願とも言えるものでした。

記憶に新しい2019年の香港民主化デモ、そして今回のコロナショックを巡る、中国とアメリカを中心とする西側諸国との対立が、国家安全法の成立の起因となったことは容易に想像できると思います。

国家安全法成立が及ぼす影響

では、次に国家安全法成立が及ぼす影響を、香港と各国の関係を事例に具体的に見ていきましょう。

香港人にイギリス市民権が与えられる?

イギリスのドミニク・ラーブ外相は28日、中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の導入を停止しない場合、英国海外市民旅券を保有する香港人に対し、英市民権を獲得する道を開く可能性があると述べた。

(2020/5/29 BBC)

イギリスの植民地だった香港には英国海外市民旅券(BNO)と呼ばれるものを保有している香港人が現在でも約30万人いると言われています。

このBNO保有者はビザなしでイギリスに6ヶ月滞在することが可能です。

イギリスのラーブ外相はこの期間を6ヶ月から1年に延長すること、さらには将来的なイギリス市民権獲得につながる可能性もあること、などにも言及しています。

こうした流れは香港から富裕層や才能あるクリエイターの流出を促す恐れがあり、香港経済、そして中国共産党政権にとっても痛手となる可能性があります。

香港における貿易の優遇措置が停止?

アメリカのドナルド・トランプ大統領は29日、中国が反体制活動を禁じる「香港国家安全法」の導入を決めたことを受け、香港に認めてきた貿易や渡航における優遇措置を停止する方針を発表した。

(2020/5/30 BBC)

イギリス統治時代からアメリカは国際金融センターの香港に対して、貿易や投資における優遇措置を実施してきました。

ところが2019年11月にアメリカで香港人権・民主主義法が成立して以降、この流れに変化が訪れています。

具体的には国務長官が、

『 香港が十分な自治を維持しているか 』

を定期的に確認することが、優遇措置を継続するか否かの判断基準となっています。

こうした優遇措置がなければ香港における貿易や投資に関する扱いは中国大陸本土と同じ扱いになり、米中貿易摩擦で苦戦している中国共産党にとっては痛手となります。

中国にとって香港という迂回ルートが使えなくなるからです。

なお、香港とアメリカの間の貿易額は数十億ドル相当と見られています。

アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は先月27日に、

「本日私は、事実を踏まえると、もはや香港は中国から独立した自治を維持していないと議会に報告した。アメリカは香港の人々を支持している」

とツイートしており、香港に対する優遇措置はまもなく停止すると見られています。

中国の大企業、多国籍企業の多くは香港に進出しており、国際展開の拠点として香港を利用している側面があります。

そうした企業への影響も出てくるでしょうし、外国企業の香港からの撤退、投資の引きあげにも繋がりそうです。

国際金融センターとしての地位失墜は避けられない

中国の統治で自由が侵食されると長い間恐れてきた香港市民は先週、岐路に立たされた。英国から返還された香港に国家安全法を制定する方針を中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が採択したことで、香港に高度の自治を保障してきた「一国二制度」が骨抜きにされるとの懸念から海外移住に関する問い合わせがコンサルタントに殺到している。

(2020/6/1 Bloomberg)

先にも述べたように昨年から香港リスクの認知は徐々に上がってきています。

発端は中国本土への容疑者の引き渡しを可能とする、改正「逃亡犯条例」を巡る抗議デモでしょう。

そしてコロナショック、今回の国家安全法制定が追い討ちをかけている感じです。

香港ではここ最近、海外移住に関する問い合わせは以前の約20倍にまで増えているそうです。

香港市民の移住先として人気を集めているのが、イギリス、カナダ、オーストラリアといったイギリス連邦諸国、そして同じ中華圏の台湾です。

アメリカも香港からの移民受け入れの要件緩和を表明しています。

先に英国海外市民旅券(BNO)の保有者は30万人、と述べましたが、このBNO旅券の申請資格を有している香港市民はその10倍のおよそ300万人いると言われています。

有資格者全員が旅券申請をし、実際に香港を脱出する、という可能性は低いものの、人材や金融資産の流出の傾向は避けられそうにありません。

実際にハンセン指数(香港証券取引所における株価指数)は5月に入り7%近くの下落を記録し、1998年のアジア金融危機以来の下落率となりました。

5月29日には香港メインボードの空売り比率が21%を記録し、統計開始以来の数字を記録しています。

今現在香港に金融資産や不動産をお持ちの方はなんらかの対策を取った方が良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

今回の香港国家安全法の現状は、『 制定方針の採択 』であり、実際の成立は9月頃になると言われています。

中国共産党当局が香港の司法当局よりも強大な権力を掌握、行使するのかどうかは現地の法律家の間でも意見が分かれており、情勢は流動的な部分もあります。

私たちにできることは日々の情勢をウォッチしつつ、リスクの分散化を図る、ことでしょう。

『 ネクスト香港 』の候補となる地域についても以前こちらの記事で触れているので、興味がある方は是非覗いてみてください。

今回は以上になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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